フォーラムへの集中連載②前夜祭『「幻聴妄想かるた」大会』

連載第2回は、前夜祭のご紹介。「幻聴妄想かるた」大会です。

★フォーラムへの集中連載
①「対話は可能か?」
②前夜祭『「幻聴妄想かるた」大会』
③プログラム1『トークセッション「共に生きるということ」』
④プログラム2『ライブ「Living Together × 東京迂回路研究」』
④プログラム3『ふわカフェ in 東京迂回路研究』

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幻聴妄想かるたは、精神障害のある人の事業所に通う人々の体験をもとにつくられたものです。東京・世田谷にある就労継続支援B型事業所「ハーモニー」のメンバーが、自分たちの幻聴妄想の実態をかるたにしました。現在は、「幻聴妄想かるた」に加え、かるたの札を一新した「新・幻聴妄想かるた」も販売され、好評を博しています。
市販されているかるたには、かるたの取り札・読み札に加え、かるたがつくられた背景と、ひとつひとつのかるたの「解説文」が付録として付けられています。ひとつひとつのかるた自体が、誰かの人生の一コマ、あるひとときの幻聴や妄想に基づいているのだなということを実感できるものになっています。

今回、フォーラムで「幻聴妄想かるた」大会を実施するのに先立ち、「ハーモニー」に赴く機会がありました。そのときのことを研究所日誌で、インターンの石橋くんがこんなふうにまとめています

「施設長の新澤さんがおっしゃっていた、「幻聴、妄想、したことありますか?」という問いかけがとても印象に残っています。確かに、普段から妄想はよくするなぁ…とか、幻聴はあまり聞こえたことはないけれど、自分の心の中の「○○しろ!」「○○するな!」という言葉はよく聞こえてくるなぁ…とか。幻聴妄想かるたは、「障害」と「健常」の「境界」について、かるたという遊びを通してともに考え、感じる試みなのだなぁ[…]」

幻聴妄想かるたは、精神障害のある人の「幻聴」や「妄想」について、シュールな笑いを楽しむだけのものではありません。
自分にとって「幻聴」「妄想」とは何なのか。そのかるたに笑う自分とはいかなる存在なのか。そのような問いを、突き付けるものでもあるのです。

幻聴や、妄想。それを語ることは、精神障害のある人の治療という文脈では、どちらかというとタブーとされてきました。というのも、こうした幻聴や妄想は、実際には存在しない作りだされたものである、という「非現実性」を理解してもらうことで、病識(自分が病気である、という認識)を深めることを促すのが従来の治療とされていたためです。
しかし最近では、浦河べてるの家を発端とした「当事者研究」を通じて、医師が診断した医学的事実だけでなく、ひとりの人間として生きているということを広げるような取り組みが広がってきました。幻聴を「幻聴さん」と名付け、自らその不思議な体験を言葉にして語り合い、外に開くことで、病気を医療者ではなく自らの手に取り戻す試みを行っているとも言えます。

「コンビニに入るとみんな友達だった」
「にわとりになった弟と親父」
「のうの中に機械がうめこまれしっちゃかめっちゃかだ」

当日はかるた大会のほか、みんなでかるたを作成する時間も持つ予定です。「ハーモニー」のメンバー、スタッフのみなさんと豊かな時間を過ごしたいと思います。

(長津結一郎)


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