【週報】共に音楽をすること

私たちdiver-sionのメンバーは、「東京迂回路研究」の事業にフルタイムで従事しているわけではなく、それぞれ別の仕事や学業などを並行して行っています。今日は、私が別の場所でしている仕事を、少しだけ紹介します。

私がしているのは、「音楽療法士」という仕事です。現場では、こどもからお年寄りまで様々な人と一緒に、聴き、歌い、奏で、語り、作ることをしています。

やっているのは、たとえば、こんなこと。

重複障害(視覚、知的、身体)のある高校生の青年Aくんとのセッションでは、打楽器を使った即興演奏をしています。あらかじめ決まった音楽を演奏するのではなく、その場の気配や互いの距離感をはかりあい、演奏することを試みています。一つの音を出しては、相手の出かたを聴き、ときには相手についていったり、意表をついてみたりしながら、「一緒にいる」枠組みそのものを作っていくような活動です。

また、日々の出来事や最近気になっていることを歌に乗せて語る、「Aくん日記」という活動もしています。ここでは、ピアノ担当者が、映画『バクダッド・カフェ』のテーマ曲「calling you」を弾くのに乗せて、Aくんと私が「○月△日、くもり、今日は学校で、…をしました」などと、日記形式でぼそぼそつぶやきます。ある場面を会話で再現してみたり、気に入った言葉のフレーズを真似しあったりしながら、流れがクライマックスに差しかかったところで(あるいは会話が続かずに黙り込んだところで)、思い切り「Ah~~, I’m calling you~~」と曲のサビを歌いあげる、という活動です。この活動のポイントは、ぼそぼそ語るところと思い切り歌い上げるところのギャップ。毎回異なるその間合いから何ともいえないおかしみが生まれ、2人で内緒話をしているような、コントをしているような気分になることがあります。

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このような活動を通じてやろうとしているのは、「共にある」場を、相手と一緒につくっていくこと。相手は、何を聴き、どう感じ、何を表現しているのか。私は、相手やこの場から何を聴き、どう感じ、何を投げかけていくのか。小さくささやかな営みながら、毎回、試行錯誤の連続です。

これまで「音楽療法士」として何をしたいのかについて、自分でもあいまいだった部分があるのですが、「東京迂回路研究」に携わることを通じて、少しずつ明確になってきたように感じています。今年は、音楽療法の現場にもよりじっくりと取り組み、言葉に表していきたいと思っています。

(三宅博子)

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