3月17日(金)に開催する、今年度最後のイベント。
「JOURNAL 東京迂回路研究 3」発行記念イベント:生き抜くための”迂回路”をめぐって。
今日は、第2部のトークセッションの内容をご紹介します。
(第1部:幻聴妄想かるたをつかった「ジェスチャーかるた大会」の紹介記事はこちら)

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第2部:トークセッション「迂回路をつくるということ」
ゲストは、ハーモニーの新澤克憲さん、カプカプの鈴木励滋さん、caféここいまの小川貞子さん。進行は、文化活動家で、多様性と境界に関する対話と表現の研究所理事でもある、アサダワタルさんと、研究所員の三宅がつとめます。これらの方々は、今年度、東京迂回路研究が「迂回路をつくるということ」について考え、実践するなかで出会った方たちです。
「迂回路」とは、人が生きるなかで言いようのない困難や生きづらさに突き当たったとき、それでも、既存の枠組みや境界をずらしながら、歩きぬくことができるような道のこと。東京迂回路研究では、生き抜くための「迂回路」を、3年間かけて探求してきました。
その過程を経て、今、「迂回路」を、次のように考えています。
ある個人や団体が新たに開拓する道であるだけでなく、誰かと誰かとのあいだや、何かと何かとのあいだに立ち現れる道、人と人との関わりのなかで次第に見出されていくような道である。つまり、「迂回路」とは、様々な人との関わりのなかで発見される「こうもありえる」というありようであり、その意味で唯一の道ではない。それぞれに、それを探っていく営みのなかで、そこここに「迂回路」はかたちづくられていく。 (「JOURNAL 東京迂回路研究 3」、18頁)
ハーモニー、カプカプ、caféここいまは、いずれも、そのようにして生まれた「迂回路」であると同時に、そのような「迂回路」が生まれる場=「こうもありえる」というありように気づくヒントを与えてくれる場としてもあるように思っています。
ハーモニーは、東京都世田谷区にある障害者就労継続支援B型事業所。不思議な声が聴こえたり、思い込みを超えた確信があったりするメンバーの経験を「幻聴妄想かるた」にすることで、仲間と経験を共有し、一人ひとりの物語を書き換えていくような場をつくっています。
カプカプは、横浜市内で4つの喫茶店を運営する地域作業所。知的障害のある人たちが、それぞれのそれぞれらしさを生かして多様なはたらきかたを模索する場であると同時に、地域の人たちが集い、つながる場づくりを行っています。
caféここいまは、大阪府堺市にあるコミュニティカフェ。浅香山病院精神科病棟の看護師だった小川貞子さんが、2015年に立ち上げました。駅前の商店街の一角にたたずむ「一見、普通の喫茶店」は、精神障害のある人が地域で暮らすための居場所や、地域住民との交流を育む場となっています。
それぞれ別の場所で、別々の道のりを辿ってきた、三つの場所。
これらの場が「迂回路をつくる」というテーマのもと、今、こうして出会うことに、ある種の必然性を感じています。そこには、全く異なる成り立ちでありながら、ある共通の「ふるまい」の積み重ねがあるように思われるのです。
アサダさんはそのことを、次のように言われました。
「それは、自分たちの現場で問題と丁寧に向かいあうことでたどり着いた、いわゆる「アート」や「医療」「福祉」などとは異なる方法による「表現」の仕方であり、それがあるときは「カフェ」「幻聴妄想かるた」「場そのもの」などのかたちとして現れているものなのだと思う」(事前打ち合わせでの会話より)
この言葉を聞いて、私がとても印象深かったのは「表現」という言葉です。これまで「多様性と境界に関する対話と表現の研究所」という団体名を掲げて活動しながらも、「表現」という言葉そのものに取り組む機会は、あまりありませんでした。ですが、アサダさんのいう「表現」とは、まさに「迂回路」のありようそのものだとも言えます。これまでやってきたことを大きく振り返り、次の一歩へとつながる視点に、わくわくしています。
それぞれの場で、その時々に直面する問題に対して、どのように試行錯誤しながら方向を見出し、今あるようなかたちが作られていったのか。その過程を紐解くことで「迂回路をつくる」手がかりを得ながら、私たち一人ひとりが、そこここで「迂回路をつくるということ」について、じっくり考える時間になればと思っています。
当日は、出来立ての「JOURNAL 東京迂回路研究 3」に加えて、バックナンバーの1号と2号もお持ち帰りいただけます。
ご参加お待ちしています!
お申し込みはこちらからどうぞ→http://www.diver-sion.org/tokyo/program/journal3-event/
(三宅博子)