【週報】JOURNAL 東京迂回路研究 3、発行しました!

先日、ついに「JOURNAL 東京迂回路研究 3」が、完成しました!

「東京迂回路研究」のジャーナル、3号目。
前号より、すこしボリュームアップしての発行となりました。

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昨年末からの執筆、編集作業。
今年は、ジャーナル発行記念イベントも予定していたため、
果たしてイベントに間に合うだろうか・・・と不安になったときもありましたが、
なんとか1冊のかたちにまとめることができました。

今号は、これまで同様、研究所員だけでなく、この1年間の活動に参加してくださった皆様からも寄稿いただいています。
これは、「東京迂回路研究」というプロジェクトにおいては、とても重要なことだと考えています。

私たちが目指してきたのは、多様な人、それぞれが、それぞれのままに、互いを活かしあって創造していく社会。

いろいろな人の実践や経験や視点が、また別の人々にヒントを与え、新たな道が生まれていく社会。

ささやかながら誌面でも、そうした状況をつくれればと考えています。
ご協力くださったみなさま、ありがとうございました。

「JOURNAL 東京迂回路研究 3」、ぜひ多くの方に、ご覧いただきたい、手にとっていただきたいです。
そしてお時間ありましたら、ぜひ感想をお聞かせください。
それがまた、私たちにとって、新たな道への道標になると思っています。

*「JOURNAL 東京迂回路研究 3」は、下記のウェブページより全編ダウンロードしていただけます。
また、送料をご負担いただくかたちになりますが、ご希望の方には配布しています(配布受付は2017年3月31日まで)。
よろしければ、下記ページの「お申し込みフォーム」よりお申し込みください。
お待ちしています。
http://www.diver-sion.org/tokyo/program/journal3/

(井尻貴子)

【週報】「ささやかさ」に目を向けること:藝大音環の卒展に参加して

こんにちは、研究所員の石橋鼓太郎です。
三寒四温の日々が続いていますね。

さて、先月の初め、2月10日から12日にかけて、私が現在通っている東京芸術大学千住キャンパスにて、「東京藝術大学音楽環境創造科/大学院 音楽音響創造・芸術環境創造 卒業制作・論文/修了制作・論文発表会」が実施されました。
展示・コンサート・音響作品・映像作品など、さまざまな形態の卒業・修了作品と、卒業・修了論文が、キャンパス内のあらゆる教室で発表されました。

その中で、印象的だったのが、いくつかの作品や論文の中に、何か共通するような問題意識が見えてきたことです。
例えば、松浦知也さんの《送れ | 遅れ / post | past》は、記憶や記録という行為の曖昧性や流動性に着目し、情報が空間の中を流れ続けることで結果的にその「記録」がおこなわれるようなシステムが組まれた作品でした。
また、渡辺千加さんの作品《Player》では、「おもちゃ楽器」という楽器と玩具の間にあるものを使って、コンサートと遊び、演奏者と鑑賞者の境界を曖昧にすることが目指されていました。
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あるいは、前田菜々美さんの《ケに介入しうごめいて、ケに完結する日々のこと》では、個人の創造性がみんなで集まる「ハレ」の時間に集約されてしまうことへの疑問から、個人的な「ケ」の時間に始まり「ケ」の時間に終わるような実践とその言語化が試みられていました。

他にも面白い作品や論文がたくさんあったのですが、紹介はこのくらいにして…
その多くに共通するように感じられたのは、強固な全体性に対峙するために、その外部に別の強固なものを打ち立てるのではなくて、そのミクロな内部における断片性・曖昧性・流動性・瞬間性などに着目し、そこから全体を浸食していくようなことを試みた実践であったということです。つまり、ある社会や共同体のあり方をセンセーショナルに糾弾するのではなく、個人の実感にもとづいた小さくもやもやとしたもの・ことを丁寧に拾い上げ、それを作品や論文といった形に落とし込んで他者に伝えていくようなものが多かったように感じられたのです。それは、「ささやかさ」に目を向けること、と言い換えることもできます。

翻って考えてみると、このような態度は、今年度の東京迂回路研究の考え方にも共通する部分があるように感じられます。今年度、東京迂回路研究では、「迂回路」という言葉を次のように捉えなおしました。

「迂回路」とは、行き止まりに突き当たった人々が脇に逸れて新たに開拓する道なのではなく、日常の中における自分と他者の関係、そして自分と自分の関係が変わることで、他者との間に立ち現れてくるような道なのではないか(本年度事業概要文より)

自らの実感に基づいた、分かりにくくもやもやとした「ささやかさ」に目を向けること。そしてそれを丁寧に拾い上げ、形にし、他者に伝えること。それは、もしかすると、制作者それぞれにとっての「迂回路」の探求であるとも言えるのかもしれません。今回の卒業制作展では、そのことの大切さと切実さが、筆者と同年代の人々の間でそれとなく共有されつつあるのだ、という希望を感じることができました。

(石橋鼓太郎)

【週報】ジャーナル発行記念イベント 第2部トークセッション

3月17日(金)に開催する、今年度最後のイベント。
「JOURNAL 東京迂回路研究 3」発行記念イベント:生き抜くための”迂回路”をめぐって。
今日は、第2部のトークセッションの内容をご紹介します。
(第1部:幻聴妄想かるたをつかった「ジェスチャーかるた大会」の紹介記事はこちら)
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第2部:トークセッション「迂回路をつくるということ」
ゲストは、ハーモニーの新澤克憲さん、カプカプの鈴木励滋さん、caféここいまの小川貞子さん。進行は、文化活動家で、多様性と境界に関する対話と表現の研究所理事でもある、アサダワタルさんと、研究所員の三宅がつとめます。これらの方々は、今年度、東京迂回路研究が「迂回路をつくるということ」について考え、実践するなかで出会った方たちです。

「迂回路」とは、人が生きるなかで言いようのない困難や生きづらさに突き当たったとき、それでも、既存の枠組みや境界をずらしながら、歩きぬくことができるような道のこと。東京迂回路研究では、生き抜くための「迂回路」を、3年間かけて探求してきました。
その過程を経て、今、「迂回路」を、次のように考えています。

ある個人や団体が新たに開拓する道であるだけでなく、誰かと誰かとのあいだや、何かと何かとのあいだに立ち現れる道、人と人との関わりのなかで次第に見出されていくような道である。つまり、「迂回路」とは、様々な人との関わりのなかで発見される「こうもありえる」というありようであり、その意味で唯一の道ではない。それぞれに、それを探っていく営みのなかで、そこここに「迂回路」はかたちづくられていく。 (「JOURNAL 東京迂回路研究 3」、18頁)

                 

ハーモニー、カプカプ、caféここいまは、いずれも、そのようにして生まれた「迂回路」であると同時に、そのような「迂回路」が生まれる場=「こうもありえる」というありように気づくヒントを与えてくれる場としてもあるように思っています。

ハーモニーは、東京都世田谷区にある障害者就労継続支援B型事業所。不思議な声が聴こえたり、思い込みを超えた確信があったりするメンバーの経験を「幻聴妄想かるた」にすることで、仲間と経験を共有し、一人ひとりの物語を書き換えていくような場をつくっています。

カプカプは、横浜市内で4つの喫茶店を運営する地域作業所。知的障害のある人たちが、それぞれのそれぞれらしさを生かして多様なはたらきかたを模索する場であると同時に、地域の人たちが集い、つながる場づくりを行っています。

caféここいまは、大阪府堺市にあるコミュニティカフェ。浅香山病院精神科病棟の看護師だった小川貞子さんが、2015年に立ち上げました。駅前の商店街の一角にたたずむ「一見、普通の喫茶店」は、精神障害のある人が地域で暮らすための居場所や、地域住民との交流を育む場となっています。

それぞれ別の場所で、別々の道のりを辿ってきた、三つの場所。
これらの場が「迂回路をつくる」というテーマのもと、今、こうして出会うことに、ある種の必然性を感じています。そこには、全く異なる成り立ちでありながら、ある共通の「ふるまい」の積み重ねがあるように思われるのです。
アサダさんはそのことを、次のように言われました。

「それは、自分たちの現場で問題と丁寧に向かいあうことでたどり着いた、いわゆる「アート」や「医療」「福祉」などとは異なる方法による「表現」の仕方であり、それがあるときは「カフェ」「幻聴妄想かるた」「場そのもの」などのかたちとして現れているものなのだと思う」(事前打ち合わせでの会話より)

この言葉を聞いて、私がとても印象深かったのは「表現」という言葉です。これまで「多様性と境界に関する対話と表現の研究所」という団体名を掲げて活動しながらも、「表現」という言葉そのものに取り組む機会は、あまりありませんでした。ですが、アサダさんのいう「表現」とは、まさに「迂回路」のありようそのものだとも言えます。これまでやってきたことを大きく振り返り、次の一歩へとつながる視点に、わくわくしています。

それぞれの場で、その時々に直面する問題に対して、どのように試行錯誤しながら方向を見出し、今あるようなかたちが作られていったのか。その過程を紐解くことで「迂回路をつくる」手がかりを得ながら、私たち一人ひとりが、そこここで「迂回路をつくるということ」について、じっくり考える時間になればと思っています。

当日は、出来立ての「JOURNAL 東京迂回路研究 3」に加えて、バックナンバーの1号と2号もお持ち帰りいただけます。

ご参加お待ちしています! 
お申し込みはこちらからどうぞ→http://www.diver-sion.org/tokyo/program/journal3-event/

(三宅博子)

【週報】ジャーナル発行記念イベント 第1部 ジェスチャーかるた大会

3月17日に、今年度最後のイベント、
「JOURNAL 東京迂回路研究 3」発行記念イベント:生き抜くための“迂回路”をめぐって
を実施します。

今回は、そのうち、第1部の「幻聴妄想かるた」を用いた「ジェスチャーかるた大会」についてご紹介します。
(第2部:トークセッションに関する紹介記事はこちらをご覧ください。)

この週報でも何度かご紹介させていただいた、世田谷区の障害者就労継続支援B型事業所「ハーモニー」。そこに通う精神障害を持つメンバーの不思議な体験を、仲間とともに語り合うことでつくった、幻聴妄想かるたに関する活動で知られています。

このようにして作ったかるたを販売したり、一般の参加者とともに新たなかるた札をつくるワークショップをしたり、それらの札を集めたwebサイトを開設したり…と、さまざまな実践がおこなわれています。

東京迂回路研究とハーモニーの皆さんとの関わりは、2015年9月に実施したフォーラム「対話は可能か?」の前夜祭から。ハーモニーの皆さんにご協力いただき、参加者の皆さんと一緒に「幻聴妄想かるた」を遊び、新たなかるた札を作るワークショップを実施させていただいたのでした。

そして、今年度の「調査編」では、調査先の方々と協働して実践をおこなう「アクションリサーチ」の手法を参考に、ハーモニーの皆さん、外部からお呼びした協力者の方と一緒に、この「幻聴妄想かるた」を使った新しい遊び方の開発をおこなってきました。

さまざまな紆余曲折を経て開発したのが、今回おこなう「ジェスチャーかるたゲーム」です。
そのルールは、以下のようになりました。

1. 札を6枚めくって、山札を中央に置きます。めくられた札を、読み上げましょう。
2. ジェスチャーを誰から始めるか決めたら、ゲーム開始!
3. ジェスチャーする人は札を決め、ジェスチャーを「始めます」と言って始めます。
4. 他の参加者は、そのジェスチャーからどの札か想像し、札を取ります。
5. 札は、一番早く正解の札に触れた人のものになります。
6. 上記をくり返し、一番多く札を取った人の勝ち!

そして、昨年10月に東京迂回路研究オープンラボにて、そして11月にアートミーツケア学会にて、参加者の皆さんと一緒にこの「ジェスチャーかるたゲーム」を遊ぶワークショップを実際におこないました。

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その中で印象的だったのは、自分が思いもしなかった方法でジェスチャーをする人、自分のジェスチャーを思いもしなかった方法で解釈する人、そして、そもそもかるた札をどうジェスチャーで表現するかについて思い悩む人が、自分が思ったよりもたくさんいたということです。

例えば、「おとうとを犬にしてしまった」という札があります。これを私は、弟が犬になるさまをジェスチャーで表現するものだと思っていました。しかし、この札を実際にジェスチャーした人は、弟を犬にしてしまう兄の方を、目線の違いだけで表現しようとしたのです!

つまりここでは、かるた札を作った人、ジェスチャーをする人、かるた札を取る人の間において、自分の体験が他者の中で、他者の体験が自分の中で、そして他者の体験が別の他者の中で、元の体験とは異なる形で生きているということが、遊びの中で体感されているとも言えます。そして、この過程についてみんなで語り合うことが、この遊びにおける「楽しさ」につながっているのです。

それは、ハーモニーのメンバーの体験をもとにかるた札をつくり、それを見てジェスチャーをし、それを見て札を取り…といった具合に、幾重にも体験が重なり合い循環していくことで、初めて成り立つ楽しさでもあります。

このように、多様な体験を、その間にある異なりはそのままに、互いに重ね合わせ生かし合うことで、この「ジェスチャーかるた大会」という小さな場は成り立ちます。そしてそれは、今年度の事業目標である「迂回路(=様々な人との関わりのなかで発見される「こうもありえる」というありよう)をつくる」ということとも、大きな関わりを持っていると思うのです。

その一端をみなさまにも体験していただくべく、今回、第1部のプログラムとして、この「ジェスチャーかるた大会」を実施する運びとなりました。この遊びを経ることで、第2部の「”迂回路”をつくるということ」というテーマによるトークセッションも、より体感を伴う形で聞くことができると思います。

…と、いろいろなことを書きましたが、まず「遊び」であり「ゲーム」なので、きっと楽しい場になること請け合いです。ぜひぜひみなさまお誘いあわせの上、お越しいただけると大変うれしいです!

お申し込みは、こちらからお願いいたします。

(石橋鼓太郎)

【週報】新しいはたらき方:Good Job! 展から。

先週末、渋谷ヒカリエで開催されていたGood Job!展に行ってきました。

Good Job! 展は障害のある人との協働による新たなしごと・はたらき方を紹介する展示。
なかでも、「Good Job! Award 入選展」では、協働から生まれた魅力的なしごと・はたらき方を全国から募集し、一次審査を通過した取り組みや活動が紹介されています。

そう、この展示のおもしろいところは「取り組み」を紹介するものだということ。

たとえば、今回アワード準大賞を受賞された「藍染手ぬぐい・型染鯉のぼり」は、NPO法人La Manoが展開する取り組み。

クラフト工房LaManoは、一般就労が困難な人たちが、生き生きと働ける場として1992年に設立されたそうです。
この工房で丁寧に作リだされているのが、天然素材を使った、見て楽しく使って優しい染織品の数々。

藍染は、飛鳥時代に中国から持ち込まれたといわれる染色技法。
LaManoで行なわれている、本藍染め(天然材料を使用)では、発酵度合いの異なる藍に繰り返し浸し、理想の濃さに染め上げる作業が必要になります。

複雑にも思える行程ですが、LaManoでは、工夫し、分かりやすく簡単な作業にすることで、
工房ではたらく人たちが好きな仕事・得意な仕事を中心に、苦手な仕事にも少しずつチャレンジできる環境をつくっているといいます。

そこから生まれる製品は、工房の強みである「藍染」と障害のある人の「絵(カタチ)」の両方が生きたものばかり。
藍染手ぬぐいは、昔ながらの柄からオリジナルの柄までバラエティがあり、選ぶのが難しいほどでした。

また、型染鯉のぼりは毎年完売してしまうほどの人気商品。
すべて手作りであること、マンションのベランダにも飾れる小さいサイズであることなどから口コミでひろがり、プレゼント用に購入される方も多いそうです。

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(写真はクラフト工房Lamano ウェブサイトよりお借りしました)

生産性ばかりを追い求めるのではなく、質の向上も諦めるのではなく、作業行程や環境づくりを工夫することで、いろいろなことが可能になり、素敵なものが生み出されていく。

そうした取り組みを知ることは、柔軟にものごとを捉える、ヒントになるのではないかと思います。

新しいはたらき方をつくることは、これからの社会を変える大きな力をつくること。

こうでなきゃできない、ではなく、こうもできる、ああもできるを、探していきたいと改めて思いました。

展示は終わってしまいましたが、ウェブサイトからは今年のトレーラー動画がご覧いただけます。
展覧会に出している3つの取り組みを取材し、動画にまとめているそうです。
よろしければぜひ、ご覧ください。
http://exhibition.goodjobproject.com/

(井尻貴子)